100年つづくブランドを
青島で描く持続可能な未来

錦田 雅哉 株式会社WAGON 代表取締役

ショートパンツを中心としたアウトドアブランド「Short pants every day」を手掛ける㈱WAGON。2023年 宮崎市青島に自社縫製工場を開設した。セレクトショップとしてスタートした企業が、自ら縫製工場を運営するという大きな挑戦。新たな一歩を踏み出した背景と、そこから見える未来の景色とはどんなものだろうか。

この青島(ANAホリデイ・イン敷地内)に縫製工場を設立した経緯を教えてください。

錦田

そもそも国内の縫製工場は廃業や高齢化で担い手不足という課題があります。県内で依頼していた自社製品の生産も苦慮するようになりました。そこで環境がよい場所に工場を作ろうといろいろ探し回ったんです。いい物件に巡り会えないでいたところに、青島ビーチパークの運営で関わった仲間が、ANAホリデイ・インの支配人さんを紹介してくれたのがきっかけです。

海に近いということで働き方も変わりますか?

錦田

僕自身がサーフィンをはじめて10年以上になるので、海まで3分という環境に拠点を構えられたのは大きかったですね。サーファーのスタッフもいて、すぐ目の前の海に入ってから出勤するってことはあるみたいで、環境の良さを感じてもらっているようです。パタゴニアみたいに仕事の合間にサーフィンに行くようなスタイルも憧れますけど、目標や計画という現実があるのでさすがに厳しいですね(笑)

年間の生産目標は?

錦田

いま工場にはスタッフが5人いて、自社ブランドの「Short pants every day」のアイテムをはじめ年間8,000着を目標に掲げました。普通なら数万着とかって数になるので生産目標としては小規模だとと思いますが、自社ブランドなので成立すると考えています。せっかく自社で縫製工場を構えたので、今年の4月に新しい総合アウトドアブランドとして「WAGON」を展開する予定です。

もともとは市街地でセレクトショップとしてスタートしたのが「WAGON」でしたね。

錦田

そうですね。アメリカのカジュアルウェアやその背景にあるカルチャーを雑誌なんかで読んで育って服が大好きだったんです。お店を始めるなら大好きな宮崎の中心市街地で、と24歳のときに「WAGON」を創業しました。当時は宮崎にもセレクトショップがたくさんあって、街の路面店が賑やかだった時代だったんです。

ショップからオリジナルブランドを展開していくまでにはどんな変遷があったのでしょうか?

錦田

およそ30年間ショップを続けてきて、いくつか転機があったと思います。テナントビルにショップが集合するようになったり、郊外型のショッピングモールが出来て市街地に人がいなくなったりしたこと。そしてやはりECですね。みんながインターネットで服を買うようになったんです。

ショップの役割が変わったと。

錦田

東京で流行っているものを僕たちが紹介する、というのがセレクトショップのビジネスだったんですが、以前ほどその役割が重要でなくなってしまったということです。むしろ宮崎で服を作って全国にむけて発信することをしなきゃって考え始めたんです。最初はシャツやパンツを試行錯誤で作るんですが、特徴がないと売れないってことに気がつくんですね。そこで僕自身が大好きだったショートパンツに特化してブランドを創ろうと。

アウトドアブランドを発信する場所が青島に移ったということは影響がありますか?

錦田

青島で作っているというのは大きな意味があると感じています。農作物にとってのトレーサビリティや、レストランのオープンキッチンと一緒で、服もどんな場所でどんな人たちが作っているかというのが大事なんです。青島は、サーフィンも出来てトレッキングや森林浴にもすぐアクセスできる。他にこんな場所はなかなか見つからない。僕たちは、そのことをブランドを通じて全国に伝えていけるといいですね。

改めて今後の展望を訊かせてください。

錦田

例えば老舗の酒蔵や地元のお醤油屋さんのように、この青島に100年続くブランドを創っていきたいと考えています。それが地域の経済を循環させることになるので。だとすると、僕たちが手掛けているのはファッションというより日常の道具、いわばギアのようなものに近いのかもしれません。半年サイクルで流行として消費されて終わるのではなくて、修理したりリサイクルしたり。そのための作り方や販売の方法も模索したいですね。

錦田 雅哉

株式会社WAGON 代表取締役

1968年 宮崎県生まれ。北海道教育大学を卒業後、函館市で販売職を経験し、地元宮崎に帰省。1993年にセレクトショップ「WAGON(ワゴン)」を宮崎市の中心市街地に開業。およそ30年間にわたってファッションはもとより、感度の高いライフスタイルを提案し続けている。2014年にショートパンツを中心としたアウトドアブランド「Short pants every day(ショートパンツエブリデイ)」を展開。2023年 宮崎市青島に自社の縫製工場を開設する。自身もサーフィンからトレッキングと幅広いフィールドでアウトドアに親しんでいる。

vol.13 2024

Photpgrapher

Kimiyuki Kumamoto

Writer

Satoshi Ogura

Assistant Producer

Hiroki Tsukishima
Kentaro Niimoto

Art Director

Osamu Goto

Producer/Director

Hideo Miyahara

Publisher

Libertyship Inc.